研修医実習レポート


 

沖縄赤十字病院
研修医

照屋 旭平

実習期間

2020年12月14日〜2020年12月25日
2021年2月1日〜2021年2月12日

●はじめての訪問診療

「敗血症だって家で診るよ。患者さんの希望ならね。」先生の言葉に驚きました。普通は入院して強い薬を使うんじゃないかと、はじめは半信半疑でした。実際に元気になった患者さんのお宅に行くまでは。
私たち研修医は勉強中で、日々病気の難しい取り決めとにらめっこします。急性期病院での経験は1年半になり、すっかり医者のつもりでいました。たくさんの偉い人が言うならこうだ、と型にはめることが多かったでしょう。救急車に乗せ、たくさんの管を繋ぎ、数分おきに数字を測って…
そんな医療を嫌がる患者さんがいるなんて、思いもしませんでした。
病気を診ることには慣れましたが、人を見るのはまだまだのようです。
 

●それぞれの希望によりそって

医療者のたくさんいる病院が落ち着く人もいれば、慣れた自宅でゆっくり過ごしたい人もいます。入院すると面会すら制限され、家族と過ごす時間が短くなることも。また、外来に通うには足腰が弱り、難しい方はどうすれば良いでしょうか。3分の診察のため行列に並ぶのは大変です。在宅と大病院に医療レベルの差が生まれないため、訪問診療はあります。患者さんの望みを叶えるため、石田先生たちは昼夜患者さんのもとに走っていきます。
 

●街全体が大きな病院

訪問診療の面白い例えがあります。クリニックがスタッフの詰め所。街中が廊下で、患者さんのお宅が病室になります。ナースコール代わりの電話が鳴れば医師や看護師が24時間いつでも駆けつける。それなら病院と変わらないなと感じました。往診とはとても安心できる仕組みです。
 

●充実した設備、スタッフの力

はいさいクリニックにはたくさんのアイテムがありました。薬品庫には大きな病院と同じ種類と量の抗生剤、心臓の薬、麻薬。胸が痛いなら心電図を、おなかが張ったら超音波を。人工呼吸器の設定までする、石田先生はなんでも屋です。看護師さんたちも皆評価能力が高く、電話だけで状況を把握し、緊急対応にも優れていました。また、本土から来た経験の豊富な先生方も増えてきています。
 

●患者さんの笑顔

広島出身なのに石田先生はうちなーぐちが上手で、皆たいそう喜びます。普段ゆっくり話を聞けていなかった事を反省し、方言を学ぼうと思いました。私自身、病院にかかることは嫌いです。何時間も待たされ、外来での患者さんは不機嫌なことも。しかし玄関から「はいさ~い」の声を聞いた患者さんたちは皆、笑顔でした。
 

●これからの社会に必要なもの

短い時間でしたが、多くのことを学びました。この経験は医師人生の大きな糧となります。訪問診療で医療が完結すれば、患者さんも喜ぶ、大きな病院の負担も減る。このすばらしい取り組みが広がればと思います。高齢化社会に加え、沖縄に多い家帰着の文化。今の世の中にとても則していると感じました。
最後に、研修を受け入れてくださった石田先生、岡本先生、岩田先生、看護師と事務の皆様、2週間ありがとうございました。